炉の指揮者 炎の守護者

フランス語で「tiseurs(ティズール)」と呼ばれる溶解炉整備士は、アルミニウム製のスーツ、ブーツ、ヘルメット、手袋を装着しなければ、溶解炉に近づくことはできません。炉のなかで煮えたぎるマグマを見るために欠かせないインナーバイザーは、日食を観察する時に用いられるものと同じ仕様です。炉のマグマの火口から5メートル離れたところでさえも、すでに温度は900度。空気は炉に近づくにつれて薄くなっていきます。アポロ計画の宇宙飛行士を彷彿とさせる整備士たちの装備は10kgもの重さがあり、ひとつの動作をするにも大変な労力が必要です。

サンルイの工房では、7人の整備士が火を守っています。彼らが働く「ホール」には、2基の窯炉があります。そのうちの1基はタンク炉で、クリアクリスタルを10トン製造することができます。もう1基のるつぼ窯は色のついたカラークリスタル専用で、容量は3.5トン。そのなかにある9つの坩堝(ポット)には、サンルイのクリスタル製作に欠かせない17色のカラークリスタルのうち、いずれか1色が入っています。耐火粘土製のるつぼを交換する作業は整備士の仕事のなかでももっとも専門的で、もっとも見ごたえのあるスペクタクルです。また、るつぼを作っている粘土のひび割れによって不純物が混入するのを防ぐため、古いるつぼは取り除き新たなものへと交換をしなければなりません。

陶製のるつぼは今なおサンルイの職人が手作りし、数ヶ月かけて乾燥させています。これが、最適な調合とクリスタルの完璧な発色を支えています。とはいえ、るつぼは数ヶ月使用すると劣化するため、4〜5人の整備士たちがチームを組んで交換します。数百キロの重量があるるつぼを、まだ熱を持ち真っ赤な状態のうちに手作業で取りだします。
溶けたクリスタルが入ったままのるつぼを、床の上で砕き、ゆっくりと冷やします。すぐそばにあるカルケーズと呼ばれる付属炉から新しいるつぼを取り出します。付属炉の中でるつぼは炉に移した際に急激な温度上昇による熱衝撃を与えないよう、あらかじめ1200度に熱してあります。るつぼをゆっくりと炉に入れ、設置できたら扉を閉め、次に吹き職人がクリスタルを取り出す時に竿を載せる張り出し窓の戸を閉めて、ようやく交換作業は完了です。ここまですべて流れるような動きで行わなければなりません。高熱を浴びた整備士たちの肌はひりひりとし、鼻には刺すような痛みが走ります。このホール中に漂っているのは熱で蒸されたアルミニウムと粘土の匂い。目を閉じればそのまぶたの下では、まだ光の残像がゆらゆらと躍っています。ようやく休憩の時間です。

インタビュー
「昔は、ヴォージュの森から直接薪が運ばれてきて、炉の燃料に使っていました。炎を絶やさないためには、フランス語で『ティソン』と呼ばれる燃えさしを絶えずかき混ぜる必要がありました。これが『ティズール』という言葉の語源です」と、溶解工程を担当するチームリーダー、ジュリアン・ポルタズは説明してくれました。「これは物質的にも象徴的にも、大きな責任です。」
1586年以来、サンルイの工房は、極めて正確に炎を守り続けてきました。
現在でも、電力やガスの供給が滞ってしまえば、クリスタルの品質が危険にさらされます。大型溶解炉も、6年ごとに更新する必要があります。
炉の火を一度完全に消し、再び灯すのです。この作業には2か月かかります。轟音が止み、熱気が引いていきます。「誰にとっても奇妙で落ち着かない期間です」と、ジュリアン・ポルタズは語ります。「でも、溶解の轟音と強烈な熱気が戻ってくると、私たちは活気を取り戻します!」
サヴォワールフェールサンルイ
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